前々回のハワイ撮影で撮ったただ一本の海辺の大木。
今までこんな写真を撮る事など全く無かったのに、
どうしてなのか視線が釘付けになってしまった。
この浜辺に根を据えてから何十年も、
海を見守りながら静かに
生き続けて来たのだろう。
その堂々とした姿に
畏敬の念さえ覚えたのを
今でも覚えている。
そして今回の撮影で、
ある日の午後に東岸のプナルウのビーチを通過する際、
何気なく引き寄せられるようにパーキングに車を停めた。
2〜3組のローカルたちが、
のんびりBBQをしながら僕の事を怪訝そうに見ている。
軽く手を挙げて挨拶すると、みんなが満面の笑顔を返してくれる。
「よそ者は挨拶くらいしろよ!」と言う険悪だった空気が
一気に解ける。
美しい波打ち際を撮り始めてしばらくすると、今更ながら愕然とした。
大木が生えている地面がえぐられて根が曝されていた。
こんな現象は、カイルアビーチでも
カウアイ島のケエビーチでも目にしたから、さほど驚かないが、
更にその海岸沿いを歩いて行くと、
既に倒木と化し、波にいたぶられている
大きな根っこの株がゴロゴロと浜辺を占拠していた。
なんと言う光景だろう。
この美しい浜辺で、
かつては優しい木陰を地に映し、人々を癒してくれていた
ヤシの木やパインの大木の亡骸が、虚しく残された光景。
絶句し、喉の奥から
嗚咽が漏れる。
涙で視界が滲む。
僕たち動物と違って、
独りでは逃げる事も抗う事も
できない彼等。
魂の奥底から絞り出された苦悩と悲鳴が、
鈍感なはずの僕の魂を
揺さぶっているような
心のざわめきを覚えた。
そうだったのか。
どうしてこの頃、
海辺の木々が気になっていたのか、
やっと分かったような気がした。
公園の隣りの民家は、海に面した芝生の庭が
3分の2ほど削られていて、
大きな土嚢を積み上げているものの、
その効果もなく、家屋が波に飲まれるのは
そう遠い先でもなさそうだ。
そして、砂浜が狭くなり、
公園の縁までえぐられてしまった場所で、
海側の根っこを曝け出しながらも、かろうじて立っていた大木。
この勇姿だって、もうすぐここから消えてしまうだろう。
ハワイのあちらこちらで顕著になっている
地球温暖化による影響。
こんな惨状を目の当たりにして、なにが僕にできるのか、
真剣に考えようと思った。
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