2007年3月10日土曜日

【輝く風】雨の街にリノ・マカニは存るのか III


落ち込んでいても仕方がないから、少し歩いてみようと気を取り直し、
通りのはずれから裏道へと入ってみる事にした。

誰もいない修理工場や朽ち果てた劇場、
乗り捨てられた錆だらけの車、ボロボロの民家・・・。
なんだか懐かしい様な、妙に気持ちが安らぐ静謐がそこには存った。

雨は音もなく降ったり止んだりを繰り返している。
人が棲んでいる気配は有る、なのに誰もいない。
ファインダー越しに見ると、
他人の視線を気にしないで気ままに暮らしているこの町の住人達のさりげなさが、
やわらかで温かい光を含んで映っていた。
ボクは思った
「太陽が輝いて風を感じる爽やかな光景だけを LINO MAKANI と考えて、
そればかりを追いかけて来たのは間違っていたかも…」と。
しかし、その時の、その心境で撮った写真は
たして「リノ・マカニ」を表現しているだろうか。
今はまだ結論に達していない。(この項終わり)

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【輝く風】雨の街にリノ・マカニは存るのか II


「オレはハワイに遊びに来てんじゃねーぞ、クソッ。」
と無意味な怒りを空にぶつけてみても、空は謝ってくれる筈がない。

怒りが諦めに変わり、
ピチャピチャと雨の雫が跳ね散る水溜りをぼんやり眺めていた。
その時、ふと顔をあげると通りの向いのカフェの三角屋根が不意に明るく輝きはじめた。
雨は止んでいないのに遠くの雲間から陽が射している。
「ウッソだろ!」と呟きながら
「空が謝ってくれてるのか?…エェ〜?…有り得ねー!」と訳が解らず混乱し、
カメラを車に置いて来た事に気が付いた。

公共のパーキングまで50メートルは走った。
「そのまま陽が射していてくれよー!」と願いながらカメラバッグを担ぎ、
キョロキョロと陽が射して輝いているところがないか探しながら、
あたふたと戻って来たらさっきの三角屋根はもう輝きを失っていた。
…ダメだ、完敗だ。…でも自分が悪いのだ。( III につづく)

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