2007年3月16日金曜日

【What happened ?】山火事は神の為す業 I

2006年の夏、マウイ島ではKiheiエリアの一番北側に滞在した。


今までマウイでは色々な所に泊まってみたが、
南側でどこへでもアクセスしやすい場所に泊まりたいなら、
Ma'alea bayに面しているこの辺りが最も適している。

Ka'anapaliやWaileaの様にハイソできどった雰囲気がなく、
庶民的で馴染みやすい空気がボクにはピッタリだ。
リゾートと言うより住んでいる感覚が味わえる。
5階のビーチフロントの部屋からは、
刻々と遷ろう海と空の色や風を感じることができ、
部屋のどこにいても波の音が心地良い。



ある時、日の出前に目が覚めてラナイに出た。
上空にはまだ星が瞬いている。
ふと西のMa'aleaの半島を眺めると、なだらかに傾斜したシルエットの先端あたりで、
蛇行するオレンジ色の炎が目に入った。
もくもくと白い煙が立ちこめて、ゆっくりと海の方へ流れて行く。
最初は山焼きでもしているのかと思った。
しかし、海岸線を走るH30には、無数の赤いライトが点滅している。
咄嗟にただ事ではないと気づき、カメラに一番長 いレンズを装着して覗いてみた。
やっぱり山火事だ。それもかなり広い範囲が燃えていた。
よく見ると蚊のように小さく見えるヘリコプターが消化活動をしてい る。
しかし、それが全く無意味な程、既に火事は巨大化している。
まるで、無計画に始めた大文字焼きである。(IIに続く)

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2007年3月15日木曜日

モーハワイ壁紙シリーズ 2

ハワイに拠点を置く、あの超メガヒットサイト
「モーハワイ・コム」にボクの壁紙写真コーナーがあります。
「写真家 高山モトムが撮る」 というページタイトルです。
2週に1度のペースでアップしています。
その中から過去の壁紙を引っ張り出して、短いコメントを添えてご紹介します。
もし、全部をまとめて見たい方や、ダウンロードしたい方は、
モーハ壁紙へどうぞ。
画像サイズも選べますよ。


バナナリーフってどうしてこんなにボクを惹き付けるのだろう。
そう、薄く大きな葉を風に破られながら、静かな安息の葉陰をつくり、
凛々しく健気に耐える姿に、母のような優しさを感じるから。

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2007年3月13日火曜日

【輝く風】HanaへのハイウェイII

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HANAでデジャヴに遭遇。
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※この体験をしたのは2005年・秋の事です。また、文章は2006年・夏にホームページにアップしたものをリライトしていますので、今話題の D.ワシントン主演映画「Dejavu」とは何の関連もありません。
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揺れる車のなかでぼんやり想いに耽っていると、
車は不意に HASEGAWA GENERAL STORE の前で停まった。
時間が止まってしまったような古めかしい建物に向かって降り立った瞬間、
デジャヴがフ〜っと僕を襲った。

HANAに来たのは初めてなのに、
この場所には前に来た憶えがある・・・・ような気がする。
十代の頃しばしば感じたことのある、あの何とも言えない胸の高揚と、
夢の中にいるような浮遊感。
スクリーンの中に入ってしまったかのような非現実感。
酸っぱい固まりのような得体の知れない何かが
胸のずっと奥の方から眉間の奥の方にジュワーっと絞り出すように
込み上げてくる感じ・・・あれは、紛れもなくデジャブだったと思う。

不思議な感覚だったが悪い気分ではない。
子供のころのデジャヴほど強烈ではないが、
言わば「懐かしい」という感性だけが脳内を締めつける感じ・・・。
デジャヴ・・・「既視感」・・・なんとも説明し難いものだが、
体験した事はありますか?


実際にはほんの10秒ぐらいだろうか、思考がストップした状態が続いたと思う。
そして唐突にそれは消えていった。
着いた時には曇っていた空から、
日差しが椰子の葉陰を店に落とし始めたことに気づき、撮影に専念した。
初めて訪れた場所なのに、ただ懐かしいだけじゃなく、
帰って来れてほっとしたような、
もっと佇んでいたいような気持ちになったことが今でも忘れられない。

でもこの建物は今はもう壊されてしまっているらしい。
古郷が消えていく様でなんだか寂しい。(この項終わり)


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2007年3月12日月曜日

【輝く風】HanaへのハイウェイI

普段はあまり観光スポットに行って写真を撮る事はしない。
そこには当然、世界中からツアー客がワンサカ集まって来る。
記念写真や風景をパチパチやっていて、
そこがどこなのかが一番重要な「ここにも来たヨ」的な証拠写真を
撮って満足している。まぁそれも有りだと思うけどね。

そして、そういう所にだってもちろん「LINO MAKANI」は存在する。
というより、言わば観光名チックな所ほど
「LINO MAKANI」の要素が沢山あったりする。
でも、観光客がいっぱいで、結局は撮影を諦めなければならなかったりする。

観光ガイドブックに載っているような写真を撮る気はないけれど
「行った事がないというのもなんだか癪だし、
何か気持ちのいい写真が撮れればいいや」ぐらいのノリで
あの "Hana" に行ってみる事にした。


ナロウでワインディングな道 HANA HWY. は、クルマ好きの僕としては
自分でドライブしたかったが、今回は写真を撮るのが目的なので、
現地で長年ツアーガイドを営んでいて、このルートを誰よりも
熟知している日本人 Mr. K に運転をお願いした。
彼は本当に素晴らしいガイドで
「この時期、この道ならあの場所に何時ごろ行けば、
こんなものを見る事ができる」
ということが全て頭にインプットされているのだ。
それはプロとしてのプライド?・・・いや、それだけではないナ。
彼はこのマウイ島を丸ごとそっくり愛しているんだ。そうとしか思えない。

さて、そんな名ガイドが薦めるポイントに到着したら、
僕はただそれを撮りたいかどうかを決めるだけでいい。
いつもと違って、こんなにオキラクな撮影ツアーでいいのかなんて気もするが、
撮る事に集中できる分、これは本当に助かった。


なんでこれがハイウェイなの?
と思うくらいクネクネと曲がりながら細く続くHANAへの道。
大自然の中をただひたすら走っていると、
地球はなんて美しい星なんだろうと改めて感じる。

樹皮が剥けた所に虹色の模様が現れるレインボーツリーの森。

群れを成して海岸近くまでやってくるドルフィンの群れ。

僕は自分が追い求めているテーマ「LINO MAKANI・・・輝く風」を
撮りたくてここまでやって来た。
見えるもの、聞こえる音、肌をなでる風、匂い。
こんなに素敵な光景をまるごと写真に収める事ができたらどんなにいいだろう。
でも僕にできるのは、
ファインダーを通して視たものを画像として残すことだけなのか。
写真として、アートとしての完成度よりも、
風の音や波の音が聞こえてきそうな写真を撮ることはできないのか。
見る人のハートを揺さぶり、眼に焼き付いて離れない写真を撮りたい!
などと考えながら車に揺られていた。(IIに続く)

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2007年3月11日日曜日

【輝く風】絶壁のうしろの丘にて

カウアイ島の北部、ハナレイ・ベイを望むプリンスヴィルは、
とても安らぐ場所だ。
大平洋が眼下に広がる絶壁のフチ沿いに緑の丘が細長く続き、
素朴なコテージが点在している。
その中のひとつ、Pali ke kua に滞在したときの感動は今でも鮮明に覚えている。

今回は、その時に撮った3点の写真で、ゆったりとした時間の流れと
「LINO MAKANI」を感じて頂けたらと思う。


「パリ・ケ・クア」はハワイ語で「断崖絶壁のうしろ」という
そのまんまの名前のアコモディションで、
先ず驚いたのが、チェックインすることもキーもなく、
メールで事前に知らされたパスコードを玄関ドアに付いている装置に入力して
(と言っても3桁の数字をただ回すだけの超レトロな鍵なのだが)入室し、
滞在期間中自由に出入りして、チェックアウトもしないで出て行くシステムだ。

まるで以前からそこに住んでいたような気分にさせてくれる、
とても気のきいたさりげなさに大感動。
リビングからは、芝生のバックヤード越しに洋々とした碧い海が一望できた。

ラナイに出て、冷えたビールを片手に
遥か下の方から聞こえてくる潮騒を聞きながら、
Na Pali Coastの北のはずれに位置する、剣のように険しい稜線の向こうに
ゆっくりと陽が落ちてゆくのを眺めていた。

ゆったりした時間が流れる中、
肌をくすぐる風が少しずつ冷たさを増して心地良い。


地球はこんなにも壮大で美しく、
生けるもの全てに惜しみなくこの愛に満ち溢れた世界を与えてくれているのに…
なんてちょっとメランコリックな気分に酔いしれる。

今ここでこうして至福の時を過ごせていることに感謝しながら、
この最高に美しい光景を大勢の人々に見せてあげたい。
写真という手段で切り取ったボクの感動をみんなと共有したい。
という衝動が心の奥底から沸き出して、
ゆっくりとカメラのシャッターを切りはじめたのだ。


《わけもなく海が好きなわけ》

子供の頃、自転車でちょっと遠乗りすれば海に行ける所に住んでいた。
10歳を過ぎた頃から、ボクはひとりでよく海に出かけた。

キャンプサイトが設えられた、岩がゴロゴロした海岸。
漂着物や海藻で汚れた、人気のない砂浜。
生臭さと日向臭さが入り混じった小さな漁港。
重油の匂いが漂い大型船のエンジンが低く唸り続ける港の桟橋。……
そこが「海」であれば、どこへでも行ったし、
どこもが大好きな「海」だった。

そこで夕陽が沈んで行くのをじっと観ているのが大好きだった。
夜になって家に帰ると、家族は皆夕食を済ませ、テレビを観ていた。
テーブルの上にはボクの分だけ膳が残されていて、
母は「もっと早く帰って来ないと片付かないじゃないの。」と
妙な叱り方をしながらもなんだか楽しそうだった。
だからボクは土曜日の午後になると、
懲りずに自転車で海に向かうことをやめなかった。

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2007年3月10日土曜日

【輝く風】雨の街にリノ・マカニは存るのか III


落ち込んでいても仕方がないから、少し歩いてみようと気を取り直し、
通りのはずれから裏道へと入ってみる事にした。

誰もいない修理工場や朽ち果てた劇場、
乗り捨てられた錆だらけの車、ボロボロの民家・・・。
なんだか懐かしい様な、妙に気持ちが安らぐ静謐がそこには存った。

雨は音もなく降ったり止んだりを繰り返している。
人が棲んでいる気配は有る、なのに誰もいない。
ファインダー越しに見ると、
他人の視線を気にしないで気ままに暮らしているこの町の住人達のさりげなさが、
やわらかで温かい光を含んで映っていた。
ボクは思った
「太陽が輝いて風を感じる爽やかな光景だけを LINO MAKANI と考えて、
そればかりを追いかけて来たのは間違っていたかも…」と。
しかし、その時の、その心境で撮った写真は
たして「リノ・マカニ」を表現しているだろうか。
今はまだ結論に達していない。(この項終わり)

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【輝く風】雨の街にリノ・マカニは存るのか II


「オレはハワイに遊びに来てんじゃねーぞ、クソッ。」
と無意味な怒りを空にぶつけてみても、空は謝ってくれる筈がない。

怒りが諦めに変わり、
ピチャピチャと雨の雫が跳ね散る水溜りをぼんやり眺めていた。
その時、ふと顔をあげると通りの向いのカフェの三角屋根が不意に明るく輝きはじめた。
雨は止んでいないのに遠くの雲間から陽が射している。
「ウッソだろ!」と呟きながら
「空が謝ってくれてるのか?…エェ〜?…有り得ねー!」と訳が解らず混乱し、
カメラを車に置いて来た事に気が付いた。

公共のパーキングまで50メートルは走った。
「そのまま陽が射していてくれよー!」と願いながらカメラバッグを担ぎ、
キョロキョロと陽が射して輝いているところがないか探しながら、
あたふたと戻って来たらさっきの三角屋根はもう輝きを失っていた。
…ダメだ、完敗だ。…でも自分が悪いのだ。( III につづく)

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